長野県長野市七瀬南部に開業したコーヒー豆自家焙煎店「ジオグラフィー」の店主が、開業準備からコーヒーのマメ知識、移住生活までいろいろとつづっています。

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インドネシア「マンデリン ペルマタガヨ農協フェアトレード」(深煎り)のご紹介
発売からだいぶたってしまいましたが、新しいマンデリンについてご紹介します。

5月23日に発売以来、特にアイスコーヒーの季節を迎えてご好評いただいており、水出しパックの銘柄としてはベストセラーとなっています。もちろんホットでもマンデリンらしい深みのある苦み(苦みが強いということではありません)とすっきりした余韻を楽しんでいただけます。

あとで説明しますが、この豆はフェアトレードということで選んだ豆で、わずかにカッピング(味の評価)の点数が足らず、スペシャルティではなくその下のプレミアムレベルの豆となっています(日本スペシャルティコーヒー協会の基準でスペシャルティは80点以上、プレミアムは76点以上)。これまで販売していたスペシャルティの「マンデリン ポルン アルフィナー」に比べると、少し個性がおとなしい感じはしますが、深煎りのレベルにおけるマンデリン感は十分です。マイルドな分飲みやすいと感じる方もいらっしゃるかと思います。また価格は、「ポルン アルフィナー」よりも100gあたり30円安くなっています。

▼ホットでもアイスでも、ほど良い苦みと甘みがあってブラックでもおいしく楽しんでいただけます。


インドネシア マンデリン ペルマタガヨ農協フェアトレード
640円/100g


生産国:インドネシア
産地:アチェ州ベネルムリア県
生産者:ペルマタガヨ農協所属のポンドクバル地区の農家
栽培地標高:1200〜1600m
栽培品種:ティムティム、アテン他
精選方法:スマトラ式
認証:フェアトレード、レインフォレスト・アライアンス
この豆は「フェアトレード」のコーヒー豆です。夏の深煎りブレンド用のベースになる豆(「ナナセブレンド」発売中です)を探している中で見つけ、もともとは5月の第2土曜日(今年は9日)のフェアトレードデーの日に発売したかったのですが間に合わず、フェアトレード月間である5月中の発売にはなんとか間に合いました。

フェアトレードについて

すでにご存じの方も多いかもしれませんが、フェアトレードは「公平な貿易」という意味で、生産者(コーヒー農家)にきちんと相応の利益がもたらされ、不公平な取引にならないようにと考えられた貿易の仕組みです。コーヒー以外にもさまざまな農産物、あるいは衣服や雑貨などがフェアトレードで取引されています。ちなみに、当店で毎年11月〜4月ごろまで販売しているフェアトレードチョコレートも、カカオをはじめとした原材料の農産物がフェアトレードです。

コーヒー農家は、栽培したコーヒーの実(中のタネが生豆になります)を通常は実のままで仲買業者などに販売しますが、この買取価格がコーヒー豆の国際相場(先物市場価格)に大きく影響を受けます。また場合によっては、仲買業者が状況や立場を利用して安く買いたたいたりすることもあります。

余裕がない農家の場合、どこの国でも同じようなものかと思いますが、借金をして栽培コストをまかない、収穫した物を売って借金を返し、残ったお金を生活費に充てつつ、再び借金をして次の年の栽培を行っていくというようなサイクルで農業を続けています。また、そんな農家や農園に働きに行く労働者や季節労働者もいます。

しかしコーヒー先物価格が低く買取価格も低い場合、コーヒー農家の収入は少なくなります。時にはコーヒーの実を売っても栽培コストもまかなえないということもあります。そうすると借金を完済できないまままた借金をし、生活も苦しいままでやがては転作や離農(そして出稼ぎ)、あるいは自分の代まではなんとかするものの、子どもたちにはコーヒー農家は継がせないなどということになってしまいます。

コーヒー先物価格は、世界最大のコーヒー生産国ブラジルの状況に大きく影響を受けます。ただ、先物市場でのコーヒーは、農産物だけでなく投機商品としての顔も持っているため、コーヒーの豊作・不作、在庫量だけでなく、ブラジルの経済・政治・社会・国際関係の状況、為替相場(対ドル)にも影響を受けます。

スーパーなどで販売されている手ごろな価格のコマーシャルコーヒーと異なり、スペシャルティコーヒー(一部プレミアムレベルのコーヒーも含む)などコーヒー豆の品質が高くそれぞれの特徴を持つような豆の場合、需要が一定程度高いこともあり、先物市場価格にはあまり左右されることはなく、また消費国側との貿易が直接的であるためトレーサビリティー(栽培から消費側までの流通経路が追跡可能かどうか)もしっかりしており、比較的買取価格も安定しているようです(その年の作柄や品質、特定の豆に対する需要による変動はあります)。

ただ、スペシャルティコーヒーの生産量は世界のコーヒー生産量の5%程度と少なく、また、スペシャルティコーヒーと言っても、生産国や地域の状況、個々の農園や農家でも状況が異なるため完全に安定しているとは言いきれず、どちらにしても大多数のコーヒー農家の不安定な経済状況は長い間問題となってきました。

フェアトレードは、コーヒー農家が適切な生活レベルとコーヒー栽培への意欲を保ち、コーヒー栽培を無理なく持続していけるようにするために生まれた仕組みです。適正な価格での買取、コーヒーの先物価格低迷時でも最低買取価格を維持する仕組み、その他社会的、環境的な基準が設けられ、個々の農家だけでなく栽培地域の発展も支援していく取り組みも含まれています。

その分のコストは、当然買取価格に含まれており、輸入価格やひいては消費国の店頭での販売価格にも反映されます。しかし、農業を無理なく続けられるような環境を作らないとコーヒー豆の生産量が減り、消費国では手軽にコーヒーを飲めなくなるかもしれませんし、また、貧困や労働に関する人権問題も関係するということで、必要なコストとして考えられています。フェアトレードについて関心のある方は、こちらの特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパンのサイトに国際フェアトレード基準の説明がありますのでご覧ください。

あと、私は知らなかったのですが、実は長野市をフェアトレードタウン(町が一体となってフェアトレードを広げていく)にしようという活動があるそうです。以前ご来店いただいた市内の高校生の方が教えてくれました。みどりの市民というNPOのブログ記事に昨年の学習会の様子がアップされています。
「フェアトレードタウンに!」

レインフォレスト・アライアンスとその他の認証

そしてレインフォレスト・アライアンス認証ですが、当店で現在販売中のルワンダ「コプロカWSブルボン」も取得していますが、持続可能な社会、経済、環境を目指すため、農業における持続可能な実践基準を満たしている農園などに与えられる認証です。土壌や水路の保護を含めた栽培地周辺の生態系の保護、ゴミの減量やリサイクル、労働者の生活環境と労働環境の向上、男女平等、農村の子どもたちへの教育の提供などの基準が定められています。
「レインフォレスト・アライアンス認証農園産コーヒー」

またこの豆は有機JAS認証も取得していますので、フェアトレードとレインフォレスト・アライアンスとあわせてトリプル認証ということになります。ただし、当店のペルマタガヨ農協の生豆の場合は仕入れ形態の関係で有機JAS認証には該当しません(その理由はこちらのブログ記事で)。

▼ペルマタガヨ農協の看板の下に描かれている認証ロゴは左から、フェアトレード、不明、USDA(米国農務省)オーガニック、EU(欧州連合)オーガニック、有機JAS(日本)、レインフォレスト・アライアンスとなります。


日本だけでなく、欧米の有機認証も取得しているようですが、それぞれの認証では守るべき基準が定められていて監査があります。つまりそれらに対応するため、ペルマタガヨ農協とそれぞれの農家は、理念に基づいて日々努力されているということですね。そしてそれがコーヒー豆に付加価値をつけて販売価格を高めることにつながり、農家の収入の維持・向上にも貢献し、コーヒーを作り続ける意欲と経済的余裕にもつながるということになります。

産地の様子

さてこの豆の産地ですが、インドネシアのスマトラ島北部アチェ州にあるタワール湖北側のベネルムリア県というところです。

▼山奥の湖といった趣のタワール湖。

By Asep Mulyadi - Danau Laut Tawar, Takengon, Aceh Tengah, CC BY 2.0

2006年に結成され、現在2000以上の農家が加盟するペルマタガヨ農協(koperasi permata gayo)はここにあります。

Google Mapにも載っていました。


今回のコーヒー豆は、その加盟農家の中でもポンドクバル地区の農家が栽培したコーヒーの実から作ったものになります。

インドネシアには600を越える民族が暮らしていますが、このあたりはガヨ族が住む地域で、昔から良質なコーヒー豆がとれることで知られています。隣の地域では、ガヨマウンテン(精選方法はスマトラ式ではなくウォッシュド)と呼ばれるコーヒー豆も生産されています。

▼真っ赤な実がなっている現地のコーヒーの木です


このアチェ州(アチェ王国があった地域)は、オランダの植民地化を経て、第二次大戦後にはインドネシアに併合されました。それに反発して独立運動と内戦が起こって危険になったため、多くの農民がコーヒー栽培をあきらめてメダンなどの都市に移住したそうです。

インドネシアの政権が代わり、そして2004年のスマトラ島沖地震による津波で大きな被害(アチェ州だけでも死者・行方不明者が16万人)を受け、独立派とインドネシア政府との平和条約締結が実現し、農民たちも自分の土地に戻れたそうです。

そんな農民たち50人が2006年にベネルムリア県の5つの村から集まり、それまで放置されていたコーヒー農園をどう再生していくのか話し合い、ペルマタガヨ農協が結成されたとのことです。フェアトレード認証の取得は2009年です。

▼コーヒー生産の現場でも活躍する女性たち


ネット上を探していたら、タワール湖の動画が見つかりました。とても美しくのんびりとした場所でした。


このような背景があるインドネシアの豆ですが、今のところ9月末くらいまで販売の予定です。この豆をベースにした深煎りのナナセブレンドも販売しておりますので、ホット、アイス、水出しコーヒーでもぜひお楽しみください。


おまけ

その1
上のタワール湖の動画を見ていたら、大きな湖を見に行きたくなり、長野市から車で40分ほどの野尻湖に行ってきました。天気はいまいちだったのですが、初めて行った野尻湖は山間の湖で、タワール湖の雰囲気をなんとなく想像しながら一周してきました。


その2
そして、以前新聞かネットの記事で読んだことのあった野尻湖の近くのお寺のことを思い出し、寄ってきました。こちらはJタウンネットの記事です。
“決して鳴らない「石の鐘」、77年吊るす寺 戦中の「代替梵鐘」に込めた住職の思い”

▼小さな集落にあるお寺には、きれいなあじさいが咲き誇っていました。


▼鐘撞き堂にぶら下がる「梵鐘記念 昭和十七年十月」と刻まれた石。第二次大戦中に鐘を供出した後にぶら下げられました。この世から戦争がなくなるまで、この状態にしておくそうです。


来月で終戦から75年を迎えます。アチェの内戦もそうですが、やはり何につけてもまずは平和な日常があってこそと感じます。
| 焙煎・豆について | 22:50 | comments(0) | - |









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